「人間らしさ」を育むために信じたいスポーツの力 Regional Sports代表 加藤慶一さん
「人間らしい生き方」とは、どんな生き方なのでしょうか?
仕事は機械によって効率化され、携帯1つで誰とでも容易に繋がることができる現代社会。これらの”便利さ”によって、わたしたちは心からの豊かさや幸せを手に入れることができているのでしょうか?
一般社団法人 Regional Sports(リージョナルスポーツ、以下、Regional Sports)代表の加藤慶一(かとうけいいち)さんが逗子に移住したのは今から1年前のこと。「人間らしくありたい」。そんな想いを軸に、活動拠点を東京から逗子に移しました。
今回は加藤さんに今まで経験してきたことや逗子に移住したきっかけ、最近スタートしたばかりの「逗子アクティビティーズ」を始めるに至った経緯をお聞きしました。
国体競泳選手がフィットネス業界を経て、ビジネスの世界へ
── まず始めに、加藤さんの経歴をお聞きしてもいいですか?
出身は鹿児島で、大学進学のときに東京に出てきました。もともと競泳選手で、国体(国民体育大会)には鹿児島代表として6回出場、オリンピック選考会にも出場しました。大学卒業後は実業団で競泳を続けましたが、腰を傷めて競技を引退しました。その後は大手フィットネスクラブに就職して、転職のタイミングで不動産業界へと移りました。
2010年代前半の日本では、フィットネスクラブに通う人が人口のわずか数%で、もっと人を呼ばなければと思っていたんです。そんな時に、不動産業界とフィットネスクラブ業界のマーケティングが似ていると聞いて、マーケティングを学ぶために思い切って不動産業界に飛び込みました。
オフラインとオンラインを通してスポーツに関わりたい
── フィットネスと不動産って全然違う業界ですが、共通点があるんですね。今はまたスポーツに関わっているということは、そこからまた、スポーツ業界に戻ってきたということでしょうか?
仕事ではWebで集客をしていたのですが、Web上での閲覧数よりもリアルな場で「この人が来てくれた」という体験の方が価値があるように感じたんです。スポーツへの情熱も衰えていなかったので、自分にできることがやりたくなってしまって。本業とは別にスイミングのレッスンを始めました。2015年ころのことかな。
さらに、本業で身につけたデジタルマーケティングの知識をオフラインのレッスンというリアルな場で試してみたくなって。2017年にWebメディア「かとすい」を始めました。レッスン参加者への復習として、泳ぎが上手くなるコツなどを記事にして掲載していました。
「スポーツ」から「アクティビティ」へと意識の転換。「地域×スポーツ」が秘める可能性
── なるほど。現在は「運動を通して心身が健康な人を増やす」をミッションにRegional Sportsで活動をされてますが、どんな流れで始まったのですか?
当時、不動産業界で働いていましたが、本業でもスポーツに関わりたくなって。スポーツ事業に参画したときに気づいたんです。
僕にとっては、“速くなる”や“上手くなる”よりも、“体を動かすことの気持ちよさ”の方が大事なんじゃないかと。
そのときに、「スポーツ」から「アクティビティ」へと自分の意識が転換しました。
ちなみに、ここでの「スポーツ」と「アクティビティ」の定義は、
・スポーツ→結果を求めるトレーニング
・アクティビティ→ただ体を動かす運動
といった感じです。
自分自身は、競泳出身の体育会系ですが、「運動」ってトレーニングみたいに気合いを入れてやる大変なものじゃなくて、もっと日々の生活に当たり前にあるものだと思うんです。例えば、部屋の掃除とか、庭の草刈りとか、子供と遊ぶこと。そういうのも運動でいいと思っています。
また、ちょうど同じタイミングでスポーツイベントの運営に関わる機会があって、スポーツは人を動かす力があることに気づきました。スポーツで地域を盛り上げることができるなと。そして、「地域×スポーツ」が面白そうだと思ったんです。
そんな流れがあって、「Regional(地域)」×「Sports(スポーツ)」の「Regional Sports(リージョナル スポーツ)」という名前を使って活動し始めました。
「Regional(リージョナル)」の定義はさまざまですが、ここでは「決められていないエリア」という意味で使っています。地図上の「〇〇県」みたいな決められたものではなくて、自分で決める地域のことです。「北九州地方」みたいな。
そんな風に、地図で決められたボーダーを超えて、好きに集まって楽しく運動やアクティビティができたらいいなと思ってます。
「人間らしい生き方」とは?直感で決めて、気づけば逗子に移住していた
── 確かに。運動って人をつなげる力がありますよね。ところで、ここまで「逗子」の話題が出てきてないのですが、逗子への移住を決めたきっかけは何だったのですか?
スイミングのレッスンをしている中で、気づいたことなんですけど、みんなとっても元気なんですよね。その頃、本業では人事・採用周りにも携わっていて、その中でいわゆる研修なんかの話も聞くことが多かったんです。でも、世の中の研修って機械的で全然人間っぽくない。一方で、レッスンで会う日常的に運動している人はみんな元気だし、幸福度も高そうだったんです。
「あれ?もしかして、研修よりも運動の方がよっぽど効果があるんじゃないかな?そのほうが人間として正しいよね?」
って思ってしまったんですよね。僕は運動って人間として生きる上での土台だと思っていて。汗をかいて、呼吸を感じる。走りながら「気持ちいい風だなー」とか。そういうことが現代人には必要だと思うんです。「人間回帰」みたいな。
そして、Regional Sportsの活動にもっとコミットしようと決めました。
この活動をするにあたって、人々の「人間らしさ」を育んでいきたいという想いがありました。僕が思う人間らしさに必要な要素は「自然」「運動」「仲間」です。自然環境で仲間と運動することが1番ハッピーだと思っています。
東京に居ると、「運動」と「仲間」は手に入ると思ったけど、「自然」が足りないなと。
そこで、海と山を求めて湘南エリアに移住しようと思いました。東京から1時間ちょっとなので、東京の職場にも通える。で、いろいろ行って見ていくうちに、逗子の自然体な感じや観光地すぎていないところに惹かれました。最終的には直感で決めて、気づいたら移住してたって感じですね。
移住して1年、これから逗子でやっていきたいことを教えてください
── 直感って大事ですよね。逗子に移住して1年が経ちましたが、実際に住んでみてどうですか?
なんていうか、人と人との距離感が僕にとってはちょうどいいんですよね。仲がいいけど、適度な距離があって近づきすぎてないというか。移住して来た人が多い街だからなのかもしれませんが、イレギュラーを認めてくれている感じがします。
まだまだ新参者なので、もちろんローカルの方々に関わっていく努力はしていますが、この雰囲気があるので住みやすいし、個性的で面白い人もたくさん住んでいるので、楽しいですね。
平日は週4日、仕事のために東京に通ってますけど、帰ってきて友達と飲みに行ったりもしてます。
移住して1年経って、ここでの生活にだいぶ馴染んできたかなと思ってます。逗子でのいろんなプロジェクトを通してローカルの方々とも仲良くなりました。でも、もっと色んな人と関わっていきたいし、関わる人を増やしていきたいんです。
そんな想いで「逗子アクティビティーズ」というサイトを立ち上げました。
イベントやアクティビティをサイトに掲載して、それを見て「面白そう!」と思った人が参加したり手伝ったりできる。そんな風にして、関わりを作っていきたいです。なにかきっかけがあれば、つながっていけると思うんです。
イベントは仲間うちの、こじんまりしたものでも全然OK。例えば、農作業とか、空き家の手入れとか、「DIYやります!」みたいな。なんでもありです。イメージは「祭り」。祭りって内も外も無くて、そこに集まった人が楽しんで、一緒にお神輿担いだり、気づいたら仲良くなってる。それが理想です。
── イメージは「祭り」。なんだか賑やかで楽しそうですね。最後に加藤さんのこれからについて聞かせてください。
Regional Sportsは僕の理想を詰め込んだ活動です。「生きる力と幸福があふれる社会を創る」のミッションをベースに、今後は教育や社員の福利厚生など、関わる分野を広げていきたいと思っています。運動を通して、身体と心が健康な人を増やしていきます。
── これから活動がどんどん広がっていきそうですね!今後が楽しみです。本日はお時間いただきありがとうございました!
=加藤さんが日々の暮らしで大切にしていること=
『日に当たり、汗をかくこと』
夏はいつもクーラーの中にいるけど、一瞬切って汗をかくようにしています。
=加藤さんの逗子のおすすめスポット=
『披露山』
海岸線からのハイキングコースがあって、そこの中腹から見える景色が美しいそうです。
・一般社団法人 Regional Sports https://regionalsports.jp/
・逗子アクティビティーズ https://zushi-activities.jp/
ライター紹介
Kumiko Iijima
高校卒業まで競泳選手として活動。大学では乳酸菌の研究に勤しみ、卒業後は自分の世界を広げるために、海外1人旅をしまくる。ヨガやメディテーションの講師資格も持つ。趣味は読書、写真、映画やアート鑑賞、フリーダイビング(素潜り)。好きな言葉は「無常」。